マネックス証券 執行役員で、名古屋商科大学MBAコースの教授 大槻 奈那さんの書かれた本です。「モーサテ」に出演されたり、雑誌への寄稿も多い大槻さん。
意外にも著作は2冊だけで、私が読んだのは、その1冊「本当にわかる 債券と金利」です。
個人が投資で利益を出そう、という時に、今、プロは経済状況をどう見ていて、どこからどこへ資金が流れようとしているか、
その大きな方向を予想するというか、観察できる様になることって、
私はとても大切だと思ってるのですが、その時のメインになるのは金利の動き。
金利の動きは、債券である国債の動きになって来ます。
本著では、債券とは?から始まって、国債の金利の動きがどうなった時、どうプロは見てるかという点が解説されていて、特に「債券とは」と「イールドカーブ」の動きについては、とても勉強になりました。
その点を中心に紹介します。
目次
債券とは
債券とは、お金を誰かから借りた時に出す「借用証書」。なので、一番の基本は、誰にお金を貸しているか?という点です。
相手は、きちんとお金を返してくれる人なのか?ちょっと危なっかしい人なのか。
またお金を貸す条件は、その人の信用度に対して適切なのか?そんな点が、債券を考えるスタートになります。
債券の本質は安定したキャッシュフローの獲得
株式と対比して考えると分かり易いのですが、
株式は発行会社の部分的所有権を得て、将来への成長力へ投資する。株式相場を見ていると、その点よく感じるのですが、超安定したガス会社とか、鉄道会社とかよりも、
売り上げが伸びるので無いか・というITソフト企業の株価が、跳ね上がったりします。
これに対して債券の基本は真逆。
発行体の信用力をベースに、元本が保証されつつ、利子を半年毎/一年毎に定期的に確保していく。
そして、満期には元本が保証される。
そういった考えが債券の本質です。
イールドカーブとは
私はイールドカーブを知ってはいたのですが、この本を読んで、見方、視点が分かってなかったなぁ・・と痛感しました。
まず「イールドカーブ」って何かですが、残期間の異なる国債の金利をプロットしたものです。
実際を見ると、こんな感じです。米国債の2020年9月時点のイールドカーブを持って来ています。

イールドカーブの変化パターン
イールドカーブ、国債の短期金利と長期金利の差を見るために結んだ線を見る時の、1つめのポイントは勾配です。
短期と長期の金利差が小さくなるか、広くなるか。基本は2パターンのどちらの局面に今は居るのかを見ていきます。
イールドカーブ基本パターン | 意味するところ |
フラット化 | 金融引き締め期 |
スティープ化 | 金融緩和期 |

イールドカーブの水準変化
勾配の他に、もう一つのポイントが水準。金利水準が上がるか、下がるかの2種類です。

イールドカーブ変化と金利水準からの局面理解
イールドカーブの勾配変化、そして金利自体の水準変化、この2つを観察することで、現在景気のサイクルのどこに居るか、もしくはプロの相場参加者が、どの様な局面だと思っているか、という点を透かして見ることが出来ます。
パターンは、大きく3パターンです。

中央銀行の金利政策は、短期金利をまず操作するので、それが上がったり、下がったりすることで、長期との差が無くなりフラット化したり、勾配がきつくなりスティープ化したりします。
後は、その状態の継続が長くなるほど、金利の水準自体が上がったり、下がったりするという理屈です。
本書で、その他触れられている点
紹介した「債券とは」という点と「イールドカーブ」に加えて、
・マイナス金利のこと
・日本財政への関わり
・債券の歴史
・プロの債券投資戦略
などにも詳しく描かれていて、書名に偽り無しで、広い範囲を本質的に理解できます。私は、結構勉強になりました。
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